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ソニー 5軸対応ボディ内手ぶれ補正機構

ソニー 5軸対応ボディ内手ぶれ補正機構

 これまで、「カタログのここをチェック!」として、イメージセンサーレンズマウント液晶モニター電子ビューファインダーについて、選択のチェックポイントを見てきました。

 今回は「その5」として、「手ぶれ補正機能」について見ていきたいと思います。

 カメラの使い勝手を決める要素はいろいろありますが、手ぶれ補正機能はそれらの中でも「欠くことのできない機能」と言えるかもしれません。

 写真撮影の自動化は、フィルムカメラ時代に徐々に進んでいました。

 まずは、露出面での自動化が始まり、最初は適切な露光量を確認できるだけだったものが、やがて適切な絞り値やシャッター速度をカメラ側で自動的に設定できるようになりました。

 次の波は、ピント合わせの自動化であり、「オートフォーカス」機能により、合焦作業をカメラが行ってくれるようになりました。

 そして、その次の波が、今回取り上げる「手ぶれ補正機能」です。




ポイント5:手ぶれ補正機能

ニコンズーム700VR QD
ニコンズーム700VR QD
 手ぶれ補正機能は、カメラの自動化の波の中では、比較的最近の機能です。

 それでも、その歴史は意外と古く、初めて光学式手ぶれ補正機能を搭載したカメラは、1994年に登場した「ニコンズーム700VR QD」です。

 このカメラは、フィルム用コンパクトカメラで、38-105mmF4.0-7.8の光学ズームを搭載していました。

 上下方向と左右方向の手ぶれを角速度センサーで検出し、コアレスモーターで補正光学系を駆動させ、補正させるタイプの手ぶれ補正機能で、20年以上前の製品でありながら、現在でも十分実用的な実力を持っています。




手ぶれ補正機能とは?

「手ぶれ」とは? ピンボケとの違いは?

 そもそも、「手ぶれ」とはどういう現象でしょうか?

 「手ぶれ」を理解するには、フィルムカメラで考えた方がわかりやすいかもしれません。

 フィルムは「感光紙」とも言われており、フィルムに塗布されている薬品に光が当たると化学変化を起こし、像が記録されることになります。

 撮影時には、シャッター幕が開き、閉じるまでの間に受けた光が記録されることになりますが、シャッター幕が開いている間に被写体やカメラが動くと、記録された像に「ブレ」が発生してしまいます。

 被写体が動いてできるブレは「被写体ぶれ」、カメラが動いてできるブレが「手ぶれ」となります。

 どちらのブレも、シャッター幕が開いている時間が短ければ、つまりシャッター速度が速ければ速いほど、小さくなります。

 また、レンズの焦点距離が長くなればなるほど、被写体の動きが増幅されますので、手ぶれの幅も大きくなります。

 一般に、焦点距離の逆数よりも速いシャッタースピードであれば手ぶれがしにくいと言われており、たとえば焦点距離100mmのレンズであれば、1/100秒よりも速いシャッタースピードが手ぶれ防止の目安となっていました。

 ちなみに「手ぶれ補正機能の効力が2段分」等と言うときには、この数値が基準となっていますので、たとえば100mmのレンズであれば、1/25秒でも手ぶれが起きにくいことを表しています。

 なお、手ぶれも被写体ぶれも、一般的にはない方が良いと言われていますが、表現手法として活用する場合もあります。

 たとえば、意図的に被写体ブレを出すことで、動きを感じさせるといった手法は、比較的良く使われています。




手ぶれの種類

 手ぶれには、「回転ブレ」「角度ブレ(ピッチ)」「角度ブレ(ヨー)」「並進ブレ(左右)」「並進ブレ(上下)」の5軸方向のブレがあります。

 このうち、回転ブレ、角度ブレに対応しているものを「3軸対応手ぶれ補正」、加えて並進ブレにも対応しているものを「5軸対応手ぶれ補正」といいます。

回転ブレ

回転ブレ

回転ブレ

 「回転ブレ」は、ロール(Roll)とも呼ばれており、レンズの光軸を中心に、右回りや左回りに回転するブレです。

 回転ブレが発生しやすい状況としては、シャッターボタンを押すときに力が入ってしまい、カメラ本体の片側だけが下側にさがってしまうことなどがあります。

 また、夜景撮影時や動画撮影時などにも目立つブレとなります。

 なお、後述しますが、回転ブレはボディ側で手ぶれ補正を実現しているカメラシステムでのみ補正が可能です。

 

角度ブレ(ピッチ:Pitch)

角度ブレ(ピッチ:Pitch)

角度ブレ(ピッチ:Pitch)

 角度ブレ(ピッチ:Pitch)とは、カメラ本体の中心を軸に、前傾したり後傾したりすることで発生するブレです。

 角度ブレ(ピッチ)は、角度ブレ(ヨー)とともに、手持ち撮影時に発生する手ぶれの中では、とくに出やすいものとなります。

 焦点距離の長い望遠系のレンズを使用するときに、角度ブレは大きくなる傾向があります。

 手ぶれ補正機能としては、比較的古くから対応した手ぶれとなります。

 角度ブレは、レンズ側・ボディ側の両方で対応が可能です。

角度ブレ(ヨー:Yaw)

角度ブレ(ヨー:Yaw)

角度ブレ(ヨー:Yaw)

 角度ブレ(ヨー:Yaw)は、角度ブレ(ピッチ:Pitch)が前傾や後傾方向の手ぶれであるのに対し、左右に回転する方向に傾くことで発生する手ぶれです。

 角度ブレ(ヨー)も角度ブレ(ピッチ)と同様に、手持ち撮影時に発生する主な手ぶれの一つとなります。

 やはり、望遠系のレンズでは、ヨーも目立ちやすくなります。

 ヨーについても、比較的古くから対応されてきました。

 また、ヨー方向の手ぶれについても、レンズ側・ボディ側の両方で対応が可能です。


並進ブレ(上下)

並進ブレ(上下)

並進ブレ(上下)

 並進ブレ(上下)は、シフトブレと呼ばれることもあり、ボディ全体が上下に並行して動くことで発生するブレとなります。

 並進ブレは、撮影倍率が大きくなると目立つ手ぶれのため、とくにマクロ等の近接撮影時に発生しやすくなります。

 逆に言うと、並進ブレについては、マクロレンズ等を使用して、高倍率で撮影をする時以外には、あまり気にしなくても良いと思います。

 並進ブレも、レンズ側・ボディ側の両方で対応可能です。


並進ブレ(左右)

並進ブレ(左右)

並進ブレ(左右)

 並進ブレ(左右)も、上下方向のシフトブレと同じで、動く方向が上下から左右に変わったものです。

 なお、並進ブレについては、上下、左右だけでなく、前後方向もあります。

 前後方向のシフトブレについては、コンティニュアス・オートフォーカスで対応することが可能です。

 上下方向のシフトブレと同様に、マクロレンズを使った高倍率撮影の時に発生する手ぶれと考えて、実用上構いません。

ピンボケとの違い

 写真画像の鮮明度を下げる要因には、「手ぶれ」だけでなく「ピンボケ」もあります。

 一見すると、どちらも似たように見えますが、ピンボケは主たる被写体に合焦していない状態ですので、多くの場合は、画面のどこかにピントがあっている場所があります。

 これに対し、手ぶれの場合には、画面全体の鮮明度が低下しています。

 なお、「被写体ブレ」の場合には、動いている被写体のみがブレて、背景や前景は鮮明な画像となります。

 そのため、このことを利用して、ダイナミックな「動き」を表現することも可能です。




光学的補正と電子的補正

 手ぶれ補正方式には、光学的に補正をする「光学的補正方式」と、電子的(ソフト的)に補正をする「電子的補正方式」とがあります。

 現在、電子的補正方式だけに対応しているのは、廉価版のコンパクトカメラだけとなりますので、ミラーレスカメラの手ぶれ補正方式は、基本的には光学的な補正となります。

 なお、キヤノンのように、動画撮影時には光学的補正に電子的補正を加えることで、補正効果を増大させるカメラをリリースしているメーカーもあります。

ボディ内手ぶれ補正とレンズ内手ぶれ補正はどちらが優れている?

 ミラーレスカメラでは光学的手ぶれ補正機能が搭載されていますが、補正をレンズ側で行うものと、ボディ内のイメージセンサー側で行うものとに分かれています。

 デジタル一眼レフでは、ニコンやキヤノンはレンズ内方式、ソニー(コニカミノルタ)やペンタックスはボディ内方式でしたが、ミラーレスカメラでは違う方式を採用しているメーカーもありますので、カメラによってはちょっと注意が必要です。

 たとえば、ソニーのデジタル一眼レフ用のレンズは、ボディ内での手ぶれ補正を前提としているため、基本的にはレンズ内には手ブレ補正機能を搭載していませんでした。

 最近の機種を除き、ソニーのミラーレスカメラではボディ内に手ぶれ補正機能を搭載していませんでしたので、デジタル一眼レフ用のレンズをマウントアダプター経由で使用する場合には、手ぶれ補正機能を活用できないケースが発生します。

 ボディ内とレンズ内のどちらで対応するかは、カメラメーカーごとの設計方針にも関わるものです。

 どちらかが一方的に優れている、というものではなく、各々の方式にメリットがあります。

 デジタル一眼レフの場合は、ファインダーは光学式でしたので、手ぶれのないファインダー像を見るためには、光学式の手ぶれ補正方式が必要でした。

 しかし、ソニーのαAシリーズのように、デジタル一眼レフに類似した機構を持つカメラのように、電子ビューファインダーを搭載したものや、ミラーレスカメラのように最初から電子ビューファインダーのカメラにおいては、ボディ内補正であったとしてもブレのない被写体像を見ることができますので、使い勝手の上での違いはかなり小さくなったと言えます。




ボディ内手ぶれ補正のメリット

すべてのレンズで手ぶれ補正機能を活用できる。
手ぶれ補正をボディ側で行うため、カメラ本体に装着できれば、すべてのレンズにおいて手ぶれ補正機能を利用することができます。
すべての手ぶれに対応できる。
レンズ内方式では、回転方向の手ぶれ(ロール)には対応できませんが、ボディ内方式であれば対応可能です。
システムが比較的安価になりやすい。
個々のレンズ内に手ぶれ補正ユニットを搭載しなくても良いため、システム全体ではコストが低くなる傾向があります。また、レンズ自体も小型軽量化が可能です。
手ぶれ補正機能による画質低下がない。
ボディ内で補正をする場合、直接イメージセンサーを動かすことで補正を行うため、補正用の光学系が不要となります。

レンズ内手ぶれ補正のメリット

レンズに最適な手ぶれ補正機能を搭載している。
個々のレンズに手ぶれ補正機能が搭載されているため、そのレンズに最適な手ぶれ補正を実現できます。
角度ブレへの対応力が強い。
一般的な手持ち撮影において、一番影響が出やすいのが角度ブレです。レンズ内の手ぶれ補正方式では、角度ブレへの対応力が大きく、とくに望遠系では効果が大きい傾向にあります。
熱対策が容易。
ボディ内方式では、イメージセンサー自体を動かすため、センサーまわりの放熱設計に制約があります。レンズ内補正方式では、イメージセンサーをボディに固定できるため、放熱設計が比較的容易であり、熱によるノイズ発生や誤作動の危険性が低下します。
ボディの薄型化が比較的容易。
イメージセンサーを固定できるため、ボディ自体の薄型化が比較的容易です。

最近のトレンド

キヤノン EF75-300mm F4-5.6 IS USM

キヤノン EF75-300mm F4-5.6 IS USM

 最初の手ぶれ補正機能は、レンズ内対応方式でした。

 キヤノンから、手ぶれ補正機構を内蔵したレンズが2002年にリリースされ、次いでニコンからも手ぶれ補正に対応した交換レンズが発売されました。

 手ぶれ補正で一番問題となるのは、上記でも記載しましたとおり、角度ブレとなります。

 角度ブレは、焦点距離が長くなるのに応じて目立ちますが、他方で、焦点距離が長くなるほどレンズの開放F値も暗くなる傾向がありますので、望遠撮影ではさらに手ぶれが発生しやすくなります。

 こうした状況から、角度ブレに一番効果的に対応しやすい「レンズ内手ぶれ補正方式」が拡がっていきました。

 当時は、フィルム一眼レフも多く使われており、レンズ内手ぶれ補正方式であれば、フィルムカメラでも利用できるというメリットもありました。

 これに対し、初めて「ボディ内手ぶれ補正方式」を搭載したデジタル一眼レフは、2004年に発売開始となったコニカミノルタのα7-digitalです。

 その後、ペンタックスやオリンパスからもボディ内手ぶれ補正方式のデジタル一眼レフカメラがリリースされてきました。

 ソニーはミラーレスカメラではレンズ内方式へと変更したため、少し前までは、レンズ内手ぶれ補正方式のキヤノン、ニコン、ソニー、パナソニック、富士フイルムに対し、ボディ内手ぶれ補正方式はオリンパスのみという状況でした。

 ところが、最近は、パナソニックやソニーのように、ボディ内手ぶれ補正方式を搭載したミラーレスカメラもリリースされ始めている一方で、オリンパスもレンズ内手ぶれ補正方式を搭載した望遠ズームをリリースし始めており、両方の方式を採用する方向へと徐々に変わりつつあるように思います。




各メーカーの手ぶれ補正対応状況

オリンパスの特徴

オリンパス E-M1 Mk2に装着したED 12-100mm F4.0 IS PRO

E-M1 Mk2に装着したED 12-100mm F4.0 IS PRO

 オリンパスは、デジタル一眼レフの時代から、ボディ内での手ぶれ補正方式を採用しており、ミラーレスカメラでもボディ内方式を踏襲しています。

 そのため、パナソニックのレンズを含め、マイクロフォーサーズ規格に対応したすべてのレンズで手ぶれ補正機能を活用することができます。

 なお、2016年には初の手ぶれ補正機能内蔵レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」を発売しました。

 現時点では、手ぶれ補正機能を内蔵したレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を合わせて2本だけですが、今後は望遠系のレンズを中心に拡充されていくものと思われます。

 なお、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO単独では5段分、ボディ側の5軸手ぶれ補正と合わせると、最大で6.5段分の手ぶれ補正が可能となっています。

キヤノンの特徴

 キヤノンは、フィルム時代から一貫して、レンズ内手ぶれ補正方式を採用しています。

 そのため、大口径レンズやマクロレンズ、薄型レンズなど、一部のレンズを除き、基本的には手ぶれ補正機能が標準搭載されています。

 とくに、ミラーレス用のEF-Mレンズについては、すべてのレンズが「IS(Image Stabilizer)」タイプとなっています。

 なお、EOS M5やEOS M6では、動画撮影時にはボディ側の電子補正機能と連携することで、より手ぶれ補正機能を高めることが可能です。

ソニーの特徴

 ソニーは、旧来からのレンズマウントであるAマウントのカメラボディでは、ボディ内での手ぶれ補正方式を採用しています。

 ところが、ミラーレスカメラにおいては、ボディ内には手ぶれ補正機能は搭載せず、レンズ側で対応する必要がありました。

 そのため、レンズマウントを利用してAマウントレンズを用いる場合には、多くの場合、手ぶれ補正機能は使えません。

 ソニーの手ぶれ補正対応レンズには「OSS(Optical Steady System)」の名称が付けられています。

 はじめて、ソニーのミラーレスカメラにボディ内手ぶれ補正機能が入ったのは、2014年12月に発売となったフルサイズ対応ミラーレスα7II ILCE-7M2で、この後に出たフルサイズ対応機ではずべてボディ内手ぶれ補正機能が搭載されています。

 2016年12月には、APS-Cタイプのミラーレスα6500 ILCE-6500にもボディ内手ぶれ補正方式が搭載されましたので、今後の機種にはボディ内手ぶれ補正機構が標準装備になっていくのかもしれません。 

ニコンの特徴

 ニコンも、デジタル一眼レフの時代から、レンズ内での手ぶれ補正対応となっています。

 ミラーレスカメラ、Nikon 1 シリーズもこの方式を踏襲しており、手ぶれ補正機能を活用するには、手ぶれ補正に対応した「VR(Vibration Reduction)」レンズを使用する必要があります。

 ニコンのレンズも、基本的にはVRに対応していますが、大口径のレンズや広角ズームレンズなど、一部のものには搭載されていませんので、注意が必要です。

パナソニックの特徴

 パナソニックも、フォーサーズ規格のカメラの時代から、手ぶれ補正はレンズ側で対応してきました。

 パナソニックの手ぶれ補正対応レンズには、「OIS(Optical Image Stabilizer)」の名前が付いています。

 なお、パナソニックも、最近はボディ内手ぶれ補正機能を搭載したミラーレスカメラをリリースし始めています。

 2013年9月に発売開始となったLUMIX DMC-GX7が最初の機種で、最近ではコンパクト性を重視したカメラ以外は、基本的にはボディ内手ぶれ補正機構を搭載しています。

 2017年3月にリリースされたLUMIX DC-GH5では、ボディ内手ぶれ補正(BIS)とレンズ内の手ぶれ補正(OIS)を連動させ、対応レンズでは5軸補正で5段分の効果を発揮するとのことです。

富士フイルムの特徴

 富士フイルムは、ミラーレスカメラでレンズ交換式カメラ市場に再参入しましたが、やはりレンズ内での対応で手ぶれ補正を実現しています。

 富士フイルムの場合は、レンズ名称に「OIS(Optical Image Stabilizer)」が付いていますので、このレンズとセットで使うときに手ぶれ補正機能を利用できます。

 なお、富士フイルムの場合、描写性能を重視したレンズのラインアップに力を入れており、そうしたレンズでは手ぶれ補正機構を内蔵していないものも多くあります。

 もし、手ぶれ補正機能を重視されるのであれば、レンズ選択にあたっては、より注意が必要かもしれません。