ニコンの新型ミラーレス:後藤哲郎氏(元ニコン執行役員)インタビュー

Nikon Mr.Goto interview
 ニコンの情報サイト、Nikon Rumorsに掲載されていた、後藤哲郎氏(元ニコン執行役員)のインタビュー記事です。もともとは、中国サイトに掲載されていた記事ですが、掲載元の許可をいただきましたので、粗訳を記載します。内容は、後藤氏も関わったデジタル一眼レフ、Dfに関するものが中心ですが、ニコンの製品開発の考え方や新たなミラーレスカメラに対する後藤氏の意見が示されており、おそらくニコン社内でも中心的な考え方であると思います。

後藤哲郎氏(元ニコン執行役員)のインタビュー「フルフレームはトレンド。ニコンがミラーレスを提供するなら、フルフレームでなければならない。」

Q:後藤氏はDfの変更にどのように関わったのですか?

Nikon Mr.Goto interview
A:大きなものはなく、小さな変更をいくつかしただけです。このレンズ(写真参照)は40歳ですが、レンズ・フードもほぼ40歳です。白いUVフィルターは、ニコンの前身である日本光学製で30歳です。私はコレクターではないので、このレンズは私の友人から購入しました。彼に私のDfを見せると、彼はレンズとUVフィルターがDfに良く合っていると言ってくれました。もちろん、私は最近のAFレンズも持っていますが、Dfの全体的なデザインスタイルは古いレンズにマッチしています。

 多くのDfファンはニコンのロゴがついたホットシューカバーなど、Df用のDIYパーツを作ったりしています。私は好きな色でダイヤルに色をつけ、暗闇の中で認識しやすくしています。後ろ側のよく使用するボタンには、赤いテープを付けています。正面にあるダイヤルには私の名前とニコンの文字をエッチングしています。ニコンジャパンはこのサービスを3000~4000円で提供していましたが、すでに終了しています。

 底には、サードパーティのグリップを付けています。グリップを使用すると、すべての指で握ることができます。純正のグリップは滑りやすいため、変えました。軽くするために、グリップにいくつか穴を開け、シリアルナンバーも見えるようにしました。これで4gの軽量化ができました。グリップをカメラに固定するネジも修正しました。バッテリー室の蓋は黒でしたが、シルバーバージョンに交換しています。

Q:なぜ、後藤さんは中国で人気のあるDfのシルバーバージョンが好きではないのですか?

A:シルバータイプは私の好みではありません。古いカメラにはシルバーとブラックのバージョンがありましたが、Dfのシルバー版はこうしたシルバーとは違います。実際、私たちの調査によると、シルバー版は売上全体の約51%です。私たちは、Df発売時にブラック・タイプを多く用意しましたが、シルバーバージョンを選択する人がより多かったです。ビューファインダーはスプリットフォーカスに変更しました。マニュアルフォーカスレンズでは、この方が便利です。

Q:フォーカススクリーンの交換は難しくないですか?

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A:フォーカススクリーンの交換は、それほど難しくはありません。ユーザーが増えて160人以上のFacebook Dfグループがあります。多くのDIYアイデアはインターネットで共有されており、私もそれらからいろいろ学んでいます。たとえばダイヤルを好きな色に変えることは、それほど難しいことではありません。 DfはDIY用の部屋がある点で、他のデジタル一眼レフとは異なります。

Q:ニコン 100周年記念でのDfの後継機は?

A:Dfの後継機開発への投資を正当化するためには、Dfの販売数量を増やす必要があるというのが会社としての立場です。Dfの評価は非常に良いのですが、販売数量の点ではそうではありません。もし皆さんがDfを今購入してくれなければ、Dfの後継機を期待するのは難しいかもしれません。 Dfが好きな人は、今すぐ購入してください。

 個人的には、Dfの後継機については、もう少しレトロにしたいと考えています。設計図面と製品全体の設計はできています。




Q:Dfは過度に厚くて取り扱いに難があり、プラスチック的な感触、という声もありますが?

A:Dfの立ち上げは短いスケジュールで行われました。CMOSセンサーのような主要なコンポーネントはD4のものを採用しましたが、それではユーザーの要求を満たすことはできませんでした。 D850やD7500などの当社の現行製品は、はるかに薄くなっています。

 D5とD750の技術を使用してDfの後継機を発売する場合は、より薄くて小さくするという条件を満たすことができます。私は、以前のFシリーズの金属の感じのようなメタリック感がないので、シルバーバージョンは購入しませんでした。カメラの上部カバーは実際にはプラスチックではなく、金属製です。レンズ取り外しボタンの周り以外のボディは金属製です。シェルコーティングは金属感を出せていません。

Q:スプリットスクリーンでのマニュアルレンズによるフォーカシングは?

A:Dfにはフォーカスアシスト機能がありますが、これに満足していないユーザーはスピリットタイプのスクリーンを入れている方もいるようです。実際にDfだけでなく、他のニコンデジタル一眼レフもフォーカススクリーンをスプリットタイプに置き換えることができます。台湾の小さな会社が部品を提供していますが、知られていません。

Q:DfプラットフォームはD600と同じであり、後継機をユーザは期待しているのでは?

A:Dfは4年前に導入されましたが、明らかに今日のデジタル一眼レフと比べられるものではありません。新しいDfが出るとすれば、多くの改善があるはずです。

Q:Dfのイメージセンサーは36メガピクセルや24メガピクセルであると考えられていましたが、実際にはD4の16メガピクセルのものが搭載されました。どうしてですか?

A:高画素化は、ISO感度とダイナミックレンジに限界があります。なぜD4のイメージセンサーを採用したのか。それは、そのセンサーは優れた高感度性能を持っているからです。24~30メガピクセルに増やしたとすると、それはありきたりとなってしまう。D5センサーの高感度性能はとても優れていますし、あるいはD850のセンサーを採用するかもしれません。より多くのユーザーを満足させるために、D5バージョンとD850バージョンの2つのバージョンがあるのです。

 しかし、10 fpsなどの速い連写性能は持てませんし、動画撮影機能も必要ないかもしれません。市場にあるすべての機能をDfの後継機に搭載しても、他のカメラとの差別化はできません。私たちがDfを設計したとき、私たちはすべての潜在的なユーザーではなく、わずかなニッチ顧客しか考慮しませんでした。だから私たちは不要と思えるいくつかの機能を捨てるつもりです。

Q:ミラーレスやニコンS2スタイルのミラーレスについては?

A:私は多くのオプションを考えました。ミラーレスカメラは薄型化することができます。しかし、クイックリターンミラーやシャッターがないため、音や振動はなくなりますが、電子的にシミュレートすることはできます。どのようにこれらの技術とアイデアを実装するかは、そうしたオプションの一つです。

 どのように実行するかということと、実際に製品化するかということは、別のことです。

Q:ニコンの次世代ミラーレスカメラでは、オリンパスや富士フイルムのようなレトロスタイルなのか、ソニーのような現代的なスタイルなのか、あるいは複合型なのでしょうか?

A:フルフレームがトレンドです。ニコンが次世代のミラーレスを出す場合はフルフレームでなければなりません。

Q:ソニーα9はセンサー技術が製品を引っ張ってますね。

A:D5のイメージセンサーはニコンの設計ですが、他社が製造しています。ニコンの顧客は幅広く、初心者から愛好家まで、プロシューマーからプロまでいることが、ニコンの優位性です。オリンパス、ソニー、富士フイルムはその一部しかカバーできておらず、今のところ、プロ写真家はいません。だから、彼らが製品を開発するとき、それがレトロスタイルであったとしても、そうした人々との出会いを試みることだけしかできません。彼らの顧客基盤はとにかく制限されているため、狭い視点でしか製品の開発ができません。かりにすべての顧客のニーズをニコン製品に実装できたとしても、そうしたことをニコンは決して行いません。

 ニコンは、全体的な製品コンセプト、デザインスタイル、機能を他社から持ってくることはしません。ニコンは60年近くカメラを作ってきたという歴史があり、あらゆる種類の顧客とのコミュニケーションがあり、彼らの声に耳を傾けてきました。このような経験をもっている会社は、他にありません。私たちが新たなミラーレスカメラをリリースする時は、他社のように、たくさんの機種を出すことはしません。私たちは、顧客が一番望んでいるものにターゲットを絞って、新製品を出します。

 α9の前に、ソニーは社内で大きな失敗を経験してきました。ニコンはソニーよりもさらに多くの失敗経験を持っています。