徐々に変わりつつあるキヤノンの戦略


キヤノンが最初のミラーレスカメラ、EOS Mをリリースしたのは、2012年9月です。ミラーレスカメラでは後発であるニコンから、さらに1年が経過しての発売であり、このことからもキヤノンの戦略を伺うことができます。

実際にリリースされたカメラ自体は、ニコンとは大きく異なっていますが、しかし既存のデジタル一眼レフの市場を脅かさずに、エントリー層にフォーカスしたカメラシステム、という点では、極めて似た戦略であったと思います。


ニコンのミラーレス戦略
ソニーのミラーレス戦略
オリンパスのミラーレス戦略


Canon EOS M
最初からAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したキヤノンのミラーレス EOS M。

キヤノンのミラーレス戦略がニコンと違っていたのは、デジタル一眼レフでも採用しているAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載している点です。

キヤノンが新たに導入したレンズマウント、EF-MマウントはEFマウントと同様に、フルサイズのイメージサークルにも対応した大口径のマウントとなっています。レンズマウントが大きいことは、カメラシステム全体のコンパクト化にはマイナス要因となりますが、現時点で振り返ってみると、結果的にはプラスに寄与したのではないかと思います。

キヤノンとニコンのレンズマウント


キヤノンとニコンの両社の違いは、レンズマウントからも見ることができます。

ミラーレスカメラのフランジバック(レンズマウント面からイメージセンサーまでの距離)は、ニコンの17mmに対しキヤノンは18mmと、ほぼ同等ですが、対応するイメージセンサーサイズの違いから、レンズ口径にはかなり差があります。

キヤノンがEF-Mで採用した口径は47mmで、デジタル一眼レフの54mmよりもコンパクト化されていますが、ニコンの一眼レフで採用されているFマウントの44mmよりも大きなマウントとなっています。

ニコンのミラーレスカメラ用1マウントの36mmよりも一回り以上大きな口径であり、このことは、デジタル一眼レフがミラーレスカメラに置き換わる状況に至ったとしても、しっかり対応できるということを優先したためと思われます。

口径(内径)
フランジバック
キヤノン EF
54mm
44mm
キヤノン EF-M
47mm
18mm
ニコン F
44mm
46.5mm
ニコン 1
36mm
17mm

エントリークラスから始まったミラーレス


キヤノンは、ニコンとともにデジタル一眼レフ市場をリードする企業であることから、基本的にはデジタル一眼レフからミラーレスカメラへの移行がゆるやかに進んでいくことを期待していると思われます。

とはいうものの、いずれはミラーレスカメラへの移行が確実に進んでいくことが見えている中、まずはエントリークラスのカメラからリリースが始まりました。その後、徐々に中級クラスのカメラの品揃えも進んできていますが、こうしたキヤノンの基本戦略は現時点でも踏襲されているといえます。


2012年にリリースされたEOS Mと、そのマイナー・バージョンアップ・モデルであるEOS M2は、エントリーユーザーを意識したインターフェースを搭載していました。電子ビューファインダーにはオプションとしても対応していませんでしたので、液晶画面を使った撮影に限定されるカメラでした。しかし、その一方で、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載しているにもかかわらずコンパクトなボディや、マウントアダプターEF-EOS Mを使用することで、EFマウントの豊富なレンズ資産をそのまま使用できることから、デジタル一眼レフ・ユーザーのサブカメラとしても人気がありました。


こうしたニーズも視野に入れ、いよいよEOS M3が2015年に登場しています。

カメラ
レンズ
2012年
EOS M
EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM
EF-M 22mm F2 STM
2013年
EOS M2
EF-M 11-22mm F4-5.6 IS STM
2014年
EF-M 55-200mm F3.5-6.3 IS STM
2015年
EOS M3
EOS M10
EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM
2016年
EOS M5
EF-M 18-150mm F3.5-6.3 IS STM
EF-M 28mmF3.5 Macro IS STM
2017年
EOS M100
EOS M6

ミドルクラスもミラーレスでカバー


EOS Mのリリースから3年後となる2015年に登場したEOS M3は、デジタル一眼レフユーザーが待ちに待ったミラーレスカメラであったと思います。インターフェースはデジタル一眼レフに近いものを搭載するとともに、オプションで電子ビューファインダーも用意されていました。このEOS M3のリリースにより、キヤノンのミラーレスカメラも新たな一歩を踏み出したのだと思います。


翌年、2016年に登場したEOS M5は、最初から電子ビューファインダーを内蔵しており、EOS Kissシリーズのミラーレスカメラ版と言っても良いくらいのカメラに仕上がっています。

2017年に入ると、EOS M5の電子ビューファインダーをオプション化したモデルであるEOS M6がリリースされ、EOS M10の後継機となるEOS M100も10月にはリリースが予定されています。これで、エントリークラスのEOS M100と、ミドルクラスのEOS M5/M6のラインアップが完成しましたので、しばらくの間はこうした構成でラインアップが進められていくものと思われます。

フルサイズはいつ?


キヤノンのミラーレスカメラは、少なくとも現時点では、デジタル一眼レフに変わる存在にはなっていません。デジタル一眼レフユーザーにとっては既存のカメラを置き換える目的で買うカメラではなく、基本的にはサブカメラとして「買い増し」用のカメラであると思います。


その意味では、デジタル一眼レフの中・上級クラスに相当するミラーレスカメラのリリース時期が気になりますが、業界の情報を見ても、具体的なスケジュールに落とし込まれるレベルには至っていないようです。オートフォーカス性能の強化を含め、要素技術の開発を進めるとともに、市場の動向を注目しているのだと思います。


キヤノンの場合、ニコンとは異なり、フルサイズに対応したレンズマウントを最初から採用しましたので、いつでもフルサイズに対応したミラーレスをリリースすることができます。このことは、キヤノンにとっての強みであることは間違いありませんが、逆にもし市場動向を見誤ってしまえば、容易に弱みに転化してしまう危険性もあります。

いずれにしても、EOS Mシリーズは、カメラ選びに迷ったときにも、安心して選択できるカメラであると思います。